従来のコンピュータを凌駕する性能を持つと言われる量子コンピュータですが、量子コンピュータを動かしているのは、実は従来型コンピュータであり、その実用化にはソフトウェアが不可欠です。量子コンピュータが抱える課題から将来的な展望まで、研究開発に携わる当社エンジニアに話を聞きました。

INTERVIEW

R.U.  開発本部第一開発ユニット テクニカルマネジャー

セックに入社した経緯から現在にいたるまでのキャリアについて

宇宙、ロボット、AI。これらすべてに関われそうな会社は、他には見つからなかった。これがセックに入社した理由です。実際に、やりたかったことにはすべて携われていますし、その後もブロックチェーン、量子コンピューティングなど次々と新しいことに挑戦もできています。

 

その中で、NASAやJAXAでの仕事もあり、「新しいことをやるとたいてい苦労もするし恥もかくが、チャレンジすることでしか得られないものがある」ということも学べました。枯れた技術から先端技術まで、ソフトウェアだけでなくシステム全体をトータルコーディネートできるのがセックの強み。前例のない挑戦を楽しみながら、社会課題の解決に貢献し、世の中をもっと便利でより良いものにしていきたい。今は、量子コンピューティングをもっと身近にするという構想を温めています。

同僚と「自動運転AIチャレンジ」に出場。2024年大会では3位入賞を果たした。

量子コンピュータとはどういうものなのか、改 めて教えてもらえませんか?

量子コンピュータは従来のコンピュータを凌ぐ速度とスケールの計算ができると期待されています。例えば1兆×1兆といった膨大な量の組み合わせを一斉に計算して、最適な答えを得るということを得意としています。AIの普及に伴い、並列処理に優れたGPUが注目されていますが、量子コンピュータの並列度はGPUを遥かに上回ります。

量子コンピュータが抱えている課題は何でしょ うか

最大の課題は、量子コンピュータが未完成であるということですね。ノイズや誤りが多く、計算の精度が低いため、誤り訂正についての研究に多くの研究者が取り組んでいます。


もうひとつの課題は、量子コンピュータが研究者による研究装置の域を脱していないということです。
量子コンピュータの応用先として創薬や材料科学、金融、機械学習などが有力視されていますが、もっと多くの人に使って試してもらわないことには、市場もできませんし、商用化の目途も立ちません。そこで必要になるのが量子ソフトウェアで、我々の出番という訳です。

当社の量子コンピューティングへの取組みについて教えてください

大阪大学との共同研究が当社の取組みの中心で、量子コンピュータの活用手法や使いやすさの向上を研究開発テーマとしています。

 

多くの人に使ってもらうためのクラウド環境や、量子計算を高速化して効率的に利用するための技術の開発に取り組んでいますが、このうち、複数のプログラムを同時実行する「量子マルチプログラミング機能」のクラウドサービスでの提供は、世界初の事例となりました。

今年3月に共同でリリースした「OQTOPUS」は、世界最大規模の量子コンピュータ基本ソフトウェアで、オープンソースとして公開しています。世界的に研究が加速し、実用化に繋がることを期待しています。

今後当社はどのような価値を提供していけるで しょうか

利用するための環境が整ったら、次はどう使うかです。

当社の事業領域であるロボットや宇宙、社会基盤といった分野に応用していきたいと考えていますが、こう使えばこの課題を解決できるというユースケースを用意して、それに価値を認めていただけるようにしたいと考えています。

既にお客様からは要望をいただいていて、点群データの処理や生産計画の最適化など、様々なユースケースを探っているところです。

量子コンピューティング 関連ニュース

量子コンピュータ・クラウドサービス向けの世界最大規模の基本ソフトウェア群をオープンソースとして公開・運用開始(2025年3月24日)

https://www.sec.co.jp/ja/news/news6692346571238969596.html

 

大阪大学量子情報・量子生命研究センターとセック、量子プログラムを高速化する量子マルチプログラミング機能を開発(2024年10月15日)

https://www.sec.co.jp/ja/ir/news/auto_20241010596522/pdfFile.pdf

 

大阪大学の量子コンピュータ・クラウドサービスで動作する、量子計算と古典計算の協調処理を高速化する機能を開発しました(2024年6月17日)

https://www.sec.co.jp/ja/news/news-3385344175951921834.html

 

大阪大学に設置した超伝導量子コンピュータ国産3号機のクラウドサービスを開始します(2023年12月21日)

https://www.sec.co.jp/ja/news/news6105400018819603173.html