はじめに

若手エンジニアが起点となって発足した、ロボット開発技術探求プロジェクト「SETAGAYA Eclipse」(世田谷エクリプス)。
当社のロボット開発技術の深化を求め、ロボコン(ロボット競技エンジニア選手権CoRE)への参加を通して、若手エンジニアの技術力向上にハードウェアとソフトウェアの両面から取り組んでいます。
今回は、このプロジェクトがどのようにして生まれ、挑戦の経過をたどってきたのか、発起人となったN.M.さんと、チームを統括するY.M.さんに話を聞きました。

INTERVIEW

Y.M.  開発本部第二開発ユニット プロジェクトマネジャー


N.M.  開発本部第二開発ユニット プロジェクトリーダ 

若手の提案がどうして研究開発プロジェクトに?

まず、若手社員が「ロボットの研究開発をやりたい」と言い出したら、社内で通るものなのでしょうか。

N.M.
私が入社1年目の終わり頃に、社会人チームも参加できる自作大型ロボットのコンテスト(CoRE)の存在を知ったのが始まりです。大学時代にロボコンを経験していたこともあって、「ぜひ会社の仲間と挑戦してみたい」という気持ちが湧いてきました。でもまだ新人だし、会社が自分の提案ですぐに動いてくれるとは思っていなかったんです。
それでも、飲み会の席で部長に「ロボットを作りたいんですが、会社で支援してもらうことは難しいですかね」と雑談がてら話したところ、思いのほか興味を示してくださって。「面白いから企画書にまとめてみてよ」と言われたので正式に提案したら、役員会で「若手を育てるいい機会」と評価され、研究開発の予算として認められたんです。メンバーを社内公募をしたところ、10人を超えるメンバーが集まってしまいました。

提案後のチーム体制はどのように構築されたのですか。

Y.M.
私は第二開発ユニットでマネージャーを務めています。N.M.君が「どう進めればいいか分からない」と相談に来たのが、このプロジェクトの出発点でした。セックにはロボコン関連の経験を持つ社員が数名いて、うまく声をかければ、回路や機械、ソフトウェアなど、それぞれの得意分野を持つ人材が集まるのではと感じていました。
そこで社内公募をしたら、意外なほど多くのエンジニアが手を挙げてくれました。私は全体のマネジメントや会社との折衝を担い、若手メンバーが実際にロボットを作る形になりました。若手中心のプロジェクトですが、セックでは「若手が面白いことをやりたがっているなら、本気でサポートする」という社風があるので、とてもスムーズに立ち上がりましたね。

実際、普段の業務があるなかで、いつロボット開発を進めているのですか。

Y.M.
研究開発として予算は出ていますが、当然ながら普段の業務を完全に離れてロボットづくりに専念できるわけではありません。そこで、チームメンバーは通常の開発業務を終えた後に作業に取り組んでいます。

ロボット開発のなかで、特に苦労している点はありますか。

N.M.
セックはソフトウェアに強みを持つ企業ですが、ハードウェア設計や電子回路に詳しいエンジニアはあまり多くありません。私は大学時代の経験を活かして回路設計を担当していますが、初年度はほぼ一人で作業を担っていたため、「自分が抜けたら継続できないのでは」という課題意識がありました。
そこで2年目以降は、回路に関する社内講習会を開催し、後輩たちが自分の手で触れて、時には壊しながら学べる環境づくりに取り組んでいます。ロボコンは挑戦と学びの場であり、失敗を通じて成長できるという特性があります。そのため、メンバーが試行錯誤を重ねながら主体的に取り組めるのがこのプロジェクトの魅力です。特定の個人に依存するのではなく、チーム全体で知識を共有し、協力しながら前に進んでいける体制を目指しています。

若手が多いチームだと、会社のルールを知らずにトラブルになりがちでは?

Y.M.

そこは私が“メンバーの保護者”のようにフォローしています。例えば、通常の業務とロボット作りの作業の優先順位を誤ってしまったり。若手には判断が難しい部分もありますね。
でも私自身も、若手のモチベーションをなるべく下げたくないんです。セックには「やりたいことを否定しない」という文化があり、先輩たちも応援してくれます。大事なのは「ロボットを頑張るなら、その分通常業務もきちんとやる」という点を外さないことですね。

研究開発プロジェクトとして活動することで、具体的にどんなメリットがあるのでしょう。

Y.M.
大きく分けて二つあると感じています。まず一つ目は、若手エンジニアが総合的なスキルを身につけられること。セックには充実した新人研修がありますが、ハードウェアまではカバーしきれていません。本物のロボットをゼロから作ることで、ソフトウェアとハードウェアを統合する視点を身につけられるのは大きいです。
そして二つ目は、会社としてロボット分野を強化するという戦略的意図です。セックはリアルタイム技術や組込みソフトウェアの開発に強みがあり、宇宙や防衛などの分野にもソフトウェアを提供していますが、ロボットは今後さらに需要が伸びる領域だと思います。そのときに「ハードもわかるソフト屋」を育てることが、事業拡大にも繋がるんです。

N.M.
私自身は、純粋にロボット作りが好きで始めたところが大きいですが(笑)、実際にやってみるとプロジェクト運営力やリーダーシップも養われるんです。予算の取り扱い、スケジュール管理、チームビルディングなど、普段の若手が担う業務ではなかなかできない経験を積めています。新人や若手がそれを学べば、業務でリーダーを任せられる可能性も高まりますし、セックが重視する「プロフェッショナルの育成」という方針にもマッチするんじゃないでしょうか。

実際、ロボコンに出場してみて手応えはどうですか。

N.M.
先ほどもお話ししたとおり、初年度はほぼ私が回路を作り、他のメンバーはそれぞれ手探りでやっていた状況でしたので、かなり大変でした。それでも「大きなロボットを自作してロボコンに出る」という達成感はすごく大きかったですね。大会自体も激戦でしたが、たくさん壊して、たくさん学べたと思います。
2年目以降は、より多くのメンバーに役割を担ってもらい、チーム全体で挑む形になりました。何人かは大学時代にロボコン経験があり「また本格的にやれるなんて嬉しい」と熱中しています。

Y.M.
大会ではハードウェアのトラブルや操作ミスも多発しますが、それも含めていい勉強になっているようです。先輩たちも「面白いことやってるね、何か協力できる?」と声をかけてくれますし、社長や部長が大会当日に現地応援に来てくれることもあります。会社としても宣伝や技術力のアピールになるし、若手のモチベーションが上がる点も含めて、プラス面が大きいと思っています。

おわりに

若手の「実際にロボットを作りたい」という声から始まり、部長や役員のサポートを得て、10名を超える若手エンジニアがゼロからロボットを自作し、ロボコンへの出場を果たしました。

その過程で得られた知識や技術は当社のロボット分野の発展につながり、困難を乗り越えた経験やチームワークは当社の組織力の強化へとつながっていきます。なにより、ひとりひとりの成長が会社の成長へとつながります。

社員の「やってみたい」気持ちを尊重する文化が、今後も新たなチャレンジを生んでいきます。

(取材・文/セック・広報担当)

SETAGAYA Eclipse

SETAGAYA Eclipseはロボット開発技術の深化を目的とした研究開発プロジェクトです。ロボット競技エンジニア選手権のCoREに出場しており、CoRE1部リーグでの優勝を目標のひとつとして活動しています。

【紹介サイト】
ロボット開発技術探求 | ロボット | 研究・製品開発 | セックを知る | 株式会社セック -SEC- 「社会の安全と発展のために」
【紹介動画】
【#SETAGAYA_Eclipse】CoRE-1: 2025 シーズン ローンチPV(ロボコンプロジェクト) - YouTube