宇宙への憧れを胸に、難解な技術の海へ。
セックには、知的好奇心を原動力に、日本の技術の発展を支えるプロフェッショナルたちがいます。今回ご紹介する第二開発ユニットのK.I.さんも、そんな探究者の一人です。
学生時代に天文学を志し、入社後は宇宙分野の開発へ。やがて、誰もが手探りだった「FPGA(Field Programable Gate Array)」という極めて専門性の高い技術領域において、社内で最初にその開発に踏み込み、道筋をつけてきた存在となりました。その探究は、ソフトウェア技術者向けのFPGA専門書を共同執筆するまでに結実します。
しかし、そんな技術者としての顔とは別に、趣味の料理はプロ顔負けの腕前。今では社内にサークルを立ち上げ、多くの仲間に手料理を振る舞うなど、温かいコミュニティの中心にいるという、少し意外な一面もあります。
冷静沈着に「本質」を追求する仕事での姿と、仲間と囲む食卓を心から楽しむ姿。その両輪を動かす原動力は、どこにあるのでしょうか。一見、寡黙に見える彼の内に秘めた情熱と、仕事や仲間への想いに向き合ってみました。
K.I. 開発本部第二開発ユニット プロジェクトマネジャー
はい。星空観察が好きで天文学を専攻し、研究室では宇宙空間のシミュレーションを行っていました。その過程でプログラミングに触れ、宇宙に関わる仕事がしたいと思い、セックに入社しました。
入社後、人工衛星に搭載されるシステムの開発を担当したのですが、そこではソフトウェアだけでなく、基板がむき出しの状態のハードウェアを直接扱うような場面も多かったんです。その経験から、比較的ハードウェアに近い知識があったため、社内でFPGAの研究開発プロジェクトが立ち上がった際に、「やってみないか」と声をかけてもらいました。
そうですね。FPGAは、一般的なソフトウェア開発とは考え方が大きく異なり、プログラミングの常識がそのまま通用しません。誰も正解を持っていない状態から、ひたすら手探りで探究する日々でした。
ただ、セックは、宇宙機や携帯電話、非接触ICカードなど、ハードウェアに密接に関わる組み込みソフトウェアの開発に強みがあります。その土壌があったからこそ、挑戦できたのだと思います。
はい。ただ、これは決して私一人の力ではありません。2017年から共同研究を進めてきた九州工業大学の先生方や、社内メンバーとの共著です。
FPGAは低消費電力かつ高速処理が可能なため、ロボットや自動車など、エッジデバイス分野で注目されています。一方で、扱えるソフトウェア技術者がまだ少ないという課題もありました。そのギャップを少しでも埋められれば、という思いもありましたね。
いえいえ、そんなことはないですよ(笑)。
本格的に始めたのはここ5、6年です。きっかけは、子どもにちゃんとしたものを食べさせてあげたい、と思ったことでした。
最初は簡単な料理からでしたが、作っているうちに工程そのものが面白くなってきて。結果として手段が目的になった、という感じです。
よく「男が料理にハマると魚をさばきたくなる」と言いますが、本当にその通りでした(笑)。 出刃包丁や刺身包丁を揃えて、道具にこだわり始めると、どんどん楽しくなって。 今はYouTubeでプロの料理人の方の動画を見ながら、フレンチやイタリアンなどの洋食を作ることが多いですね。
料理って、実はすごく「科学」なんです。 なぜこの手順なのか、この温度なのか。その仕組みが分かると、うまく作れるようになるのが面白い。仕事でやっていることと、少し似ているかもしれません。
同僚に自作の料理の写真を見せたところ、「食べてみたい」と言われ、レンタルキッチンを借りて料理を振る舞ったのが始まりです。ちょうど会社でサークル活動を後押しする制度ができて、「それなら」と思い料理サークルを立ち上げました。
今ではメンバー以外も気軽に参加できる会になり、多い時には20人ほど集まってくれます。
できているかは分かりませんが、常に「ちょっとしたおまけを付ける」ことは意識しています。
お客様から依頼されたことをきちんとやるのは当然ですが、「これがあったほうが分かりやすいかもしれないな」と資料を加えるなど、半日ほどでできる、ちょっとしたプラスアルファを添える工夫を重ねています。
自分が何かを買った時に、ささやかなおまけが付いていると嬉しくなりますよね。ほんの少しの手間でも、喜んでもらえる。そういう一手間を惜しまないようにしたいな、といつも思っています。
とても真面目な会社だと思います。 何か問題が起きても、みんなでどうしようかと知恵を出し合って、真面目に向き合って解決していく。その雰囲気は、少し大学の研究室に似ているかもしれません。
お客様からも、「言わなくても自分たちで考えて、どんどん仕事を進めてくれる」と言っていただくことがあります。 一人ひとりが当事者意識を持ち、真面目に仕事に向き合う。それがセックらしさだと思います。
宇宙への探究心を原点に、ソフトウェア技術者として未開拓の技術領域に踏み込み、やがて専門書の執筆にまで至ったエンジニアとしての歩み。そして、家族への思いをきっかけに始まった料理が、今では多くの仲間をつなぐ場になっています。
一見すると全く違う二つの世界は、どちらも「仕組みを理解し、より良いものを生み出したい」という純粋な探究心により支えられていました。
「料理をしている時は、それだけに集中してしまいますね。子どもがゲームに夢中になるのと同じです」
そう言ってはにかむK.I.さんの姿は、難解な技術領域を切り拓いてきたエンジニアというイメージとは少し違い、とても穏やかなものでした。専門性を深く突き詰めながらも、決してそれを誇示せず、仲間との時間を大切にする。K.I.さんの歩みは、セックという会社のものづくりの姿勢を、そのまま映し出しているようでした。
(取材・文/セック・広報担当)















