はじめに

サイバーフィジカルシステム(CPS)やAI技術の社会実装が進む中、多くの企業で高度なIT人材の不足が課題となっています。DXを推進しようとしても、現場で自律的にシステムを構築・運用できる人材の育成に課題を抱える企業は少なくありません。
そんな中、セックでは、創業以来培ってきた独自の教育思想やノウハウから生まれた教育サービスを提供しています。
「答えを教えない」「自ら課題を解決する力を育てる」。
一見すると遠回りにも思えるこの教育方針は、なぜ生まれたのでしょうか。そして、この考え方を基にした教育サービスはどのように始まり、受講者にどのような変化をもたらしているのでしょうか。
今回は、教育サービスの立ち上げに携わり、現在もプロジェクトを推進するS.I.さんにインタビュー。社内研修での気づきから、サービス化に至るまでの経緯、そして「伴走型」教育が持つ難しさと面白さまで話を聞きました。

INTERVIEW

S.I.  開発本部第一開発ユニット テクニカルマネジャー

セックの新人研修が原点となった教育サービス

ソフトウェア開発会社であるセックで「教育サービス」を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

実は、始まりは社内のマーケティング研修だったんです。「新しいマーケットを開拓する」という課題を与えられて、自社の強みを改めて分析しました。
セックの新入社員研修は、半年間にわたってアセンブラなどの基礎技術を学び、技術の土台を着実に身につけることを重視しています。「セックの新人研修には、他社にはない強みがあるんじゃないか? これを社外向けサービスとして展開できるのではないか?」と思いついたのがきっかけです。

とはいえ、セックはソフトウェア開発をビジネスとする会社です。教育サービスを提案した時の、社内の反応はいかがでしたか?

正直なところ、最初はあまり反応が良くなかったです(笑)。
普段、ソフトウェア開発をしているメンバーからすれば、「面倒なことをやりだしたな」と感じた人も、きっといたと思います。
ただ、直属の部門長は面白いと言ってくれましたし、何より大きかったのは当時の副社長が応援してくれたことです。営業活動を進める際も、決裁権を持つ方へ直接提案できるよう、社内外で支援してくれました。新しい取り組みを進めるには、周囲の後押しや協力が欠かせないと感じましたね。

自ら学び、課題解決力を鍛えるセックの流儀

カリキュラムについて伺います。「答えを教えない伴走サポート」という方針が特徴的ですが、なぜあえて答えを教えないのでしょうか?

これは、創業以来セックが大切にしてきた人材育成の考え方なんです。私たちが新人だった頃も、基本的にはすぐに答えを教えてくれませんでした。「まずは自分で考えてみなさい」と促されます(笑)。
セックの経営方針にも「プロに『教える』と『育てる』はない、『学ぶ』と『育つ』があるのみ」と明記されています。受け身で答えを待つのではなく、自ら調べ、考え、壁にぶつかりながら解決策を探る。「課題解決力」を養うことが最大の目的なんです。

教える側としては、答えをそのまま伝えてしまう方がはるかに簡単ですよね。一人ひとりの状況を見ながら、答えではなく「気づき」を促すには、相応の時間と労力が必要なのではないでしょうか。

おっしゃる通りで、とても大変ですし、労力がかかります。
例えば、私たちが提供している「SEC Online Boot Camp」では、一方的に講義を行う時間はほとんどありません。目的を共有した後は「ここに向かって、何が最適でどんな進め方がいいか、チームで決めてやってごらん」と任せます。
その上で、週次報告などの場で、「今、何が分かっていないのか」「次はどうアクションするべきか」といったPDCAの壁打ち相手になります。決して答えは言わず、軌道修正だけをひたすら行っていくイメージです。

※SEC Online Boot Camp:セックが提供する実践型IT人材育成プログラム

受講者が主体的に学べるようにするために、どのような工夫をしていますか?

人から言われてやるのではなく、自分の頭で考えて「動かなかったプログラムが動いた!」という成功体験をしてもらうことですね。エンジニアって、やっぱりその瞬間の喜びがあるから好きでやっているわけです。
そういう小さな成功体験を積み重ねられるような環境を用意してあげること。それが、私たちができる最大のサポートだと思っています。

教育を通じて、受講者の「成長」を目の当たりにする面白さ

サービスを始めてから今日まで、S.I.さんのモチベーションを保ち続けられた理由は何でしょうか?

実際にサービスを提供する中で、「ものすごく面白いぞ」と気づいたことですね。
ソフトウェア開発との一番の違いは、ユーザーである受講者と常に対話し、その反応が目の前で見られることです。長い時間をかけて伴走していく中で、受講者が確実に成長していく姿を間近で見られるんです。これが楽しくて、もっと多くの人の成長を支援したいという気持ちが強くなりました。

企業の人事担当者の方々からの評価はいかがですか?

「一人ひとりをしっかり見ている」という点を評価していただいていることが多いですね。本人が何を考え、どういう過程でアウトプットをしたのか。そこまで深く観察してフィードバックを返すのはとても手間がかかりますが、それこそが一番喜ばれる部分であり、セックだからこそできる価値だと考えています。

「セックらしい教育」の未来― EdCycle構想が目指すもの

教育サービスでは「EdCycle(教育→実務→成長→教育の循環)」という構想を掲げているそうですね。

研修を提供して終わり、という形にはしたくないんです。
私たちが育成に関わった人材が、ソフトウェア開発の実務を通じて成長し、実務で獲得した知見が、次の人材育成につながっていく。こうした良いサイクルを生み出したいという思いから、「EdCycle」と名付けました。

最後に、今後の展望を教えてください。

現在は、学生向け、企業向け、自治体との連携など、さまざまな取り組みが進んでいます。
一方で課題もあります。特に、カリキュラムを設計し、伴走型の指導ができる人材を増やしていくことですね。

今後は、当社の最新の開発環境に伴走型のメンタリングを組み合わせ、企業のDX推進により貢献できる形を模索していきたいと考えています。例えば、社内で安全にAIアプリケーションを開発できる環境を用意し、自律的に学び成長できる人材を育てていくような取り組みです。
その上で、「セックが教育をやる意義は何か」を常に問い続けながら、本質的なエンジニア育成に泥臭く挑み続けていきたいと思っています。

おわりに

「プロに『教える』と『育てる』はない、『学ぶ』と『育つ』があるのみ」
当社が、宇宙や車両自動走行をはじめ、高い信頼性が求められるシステム開発で顧客から信頼を得ている背景には、自ら学び、考える、自律的な成長を促す企業文化があります。

AIが身近になり、すぐに「答え」にアクセスできる時代だからこそ、自ら考え、試行錯誤を重ねることで獲得した、本質的な解を見出す力が必要です。「EdCycle」構想は、こうしたセックの人材育成の考え方を、社内にとどまらず社外にも広げていこうとする取り組みの中で生まれました。学びから成長へ、そして次の学びへとつながる循環を生み出す挑戦は、これからも続いていきます。

(取材・文/セック・広報担当)

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