背景と目的

システム保守・サポートの現場では、問い合わせ対応や障害調査の多くが人手に依存しており、対応品質の維持と業務効率化の両立が長年の課題となってきました。特に、ベテラン担当者の経験や判断が個人に蓄積されやすく、新任担当者が業務に習熟するまでに時間を要する点や、障害発生時の原因特定に多くの時間がかかる点が問題となっています。
近年、生成AIの活用が注目されていますが、汎用的な生成AIをそのまま業務に適用した場合、業務に求められる精度を安定して満たせないケースも多く見られます。また、オンプレミス環境など厳格なセキュリティ要件への対応や、業務固有のナレッジ・ログ解析への適合といった点でも課題が残されています。
こうした背景を踏まえ、本研究では「現場で実際に使える」ことを前提とした生成AIソリューションを自社で確立することを目的としています。

構想

コスト削減と品質向上の両立を実現する生成AIソリューションの確立を目指します。
担当者の作業負荷を軽減しながら対応品質を安定させるとともに、案件ごとにクラウド/オンプレミスの運用形態を選択可能とし、セキュリティ要件に柔軟に対応できる構成とします。最終判断は人間が担う「人間中心」の運用設計とすることで、誤応答や情報漏洩のリスク低減を図ります。

研究開発内容

過去の問い合わせ記録、FAQ、技術ドキュメントを活用し、担当者の回答作成を支援するシステムを開発し、試験運用を行っています。
試験運用の結果、対象とした問い合わせにおいて、1件あたりの対応時間を従来の3~5分から1~2分に削減し、月あたりで60~75%程度の対応時間削減を確認しています。

  1. オンプレミス環境に最適化した高精度RAG(検索拡張生成)
    クラウドAPIを利用できない環境において、プロンプトの自動最適化と、 ベクトル検索・キーワード検索を組み合わせたハイブリッド手法により、 回答精度を高める技術を開発しています。
  2. ログからの事象自動解析
    過去の対応ログをAIが自動解析し、当該システム固有の障害パターンや 頻出エラーを体系化します。蓄積データを活用することで、 汎用AIでは対応できない専門領域の知識を補完します。
  3. 画像情報からの自動情報抽出
    添付されたスクリーンショットからエラーメッセージやシステムIDを 自動認識し、回答生成に活用します。オペレーターが画像を目視確認して 手入力する工数を削減します。
  4.  回答精度の評価手法の確立
    生成AIの回答品質の測定手法を含め、当該業務の特性に適した評価指標と検証プロセスを検討・設計しています。