背景と目的

人類が宇宙という謎多き存在に魅了された古来より、数多の探求者が真理究明に情熱を燃やしてきました。数百年前ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で天体観測をしてからというもの、観測技術も急速な発展を遂げることで、未知が次々と既知の事象となっています。そして、現在では大気圏外から直接事象観測可能な装置として宇宙機が利用されるようになりました。 
宇宙機は一度宇宙に打ち上ると気軽に修理が出来ないため、安全性、信頼性が厳しく問われます。当社ではこれまで宇宙機搭載ソフトウェア開発に数多く携わってきました。ただ、長期間稼働している機体ではソフトウェアでは回避できないハードウェアの劣化による故障の発生確率が高まります。そのため、事故防止に繋げる運用環境が望まれています。 
本研究では機械学習技術を用いて、宇宙機の運用中に発生した運用情報とデータの関係性を学習し、故障に繋がる予兆を検出するためのモデルを構築します。異常を予兆し、早期に検出することが出来れば事前の対処が可能となり、安定運用に大きく寄与します。

研究開発内容

宇宙機を運用する過程でもっとも酷使される部位であり、宇宙機の全ての運用になくてはならない「電源系装置の故障」を早期に察知することが重要です。本研究では定常的なデータや故障発生記録が存在し、長期間運用されてきた宇宙機であるX線天文衛星「すざく」を解析対象として選定しました。11種の異常検出アルゴリズムでモデルを作成し、故障の予兆検出における「検出できたか」「誤った検出がどの程度あったか」「故障発生のどれくらい前に検出できたか」「モデル学習や検出の処理時間がどれくらいかかったか」の4つの視点で評価したところ、故障の1日以上前に予兆を検出できたケースもあるなど、4つのアルゴリズムにおいて有用な結果を得ることができました。 
「すざく」で得たデータ解析手法やモデルを、同じ地球周回衛星である「ひので」「ひさき」にも適用したところ、予兆を検知することができたため、一定の条件を満たす宇宙機においては汎用的に利用できる技術であることを証明できています。

構想

共同研究者であるJAXA等の宇宙機を用いて検証と実績を積み、官民が打ち上げる地球周回衛星に故障予兆検知サービスを提供することを目指します。また、地上で様々利用されている蓄電池(セカンドライフ)への技術転用(故障予兆検知サービス、健全性評価サービスなど)を目指しています。