2024年2月27日
株式会社セック

 

 株式会社セックは、The 5th International Symposium on Neuromorphic AI Hardware(2024年3月1日~2日、北九州市小倉)において、レザバーコンピューティングに関する下記の研究発表を行います。

 

  1. Detecting operating status of factory automation machines using reservoir computing
    レザバーコンピューティングによるFA機器の稼働状況検知
     
  2. Hammering test system using Reservoir Computing
    レザバーコンピューティングによる打音検査システム


 当社は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業「高効率・高速処理を可能とする AI チップ・次世代コンピューティングの技術開発」において、九州工業大学などと超低電力エッジAI チップの研究開発とその実用化に取り組んでいます。本研究発表はその研究成果の概要について発表するものです。

Detecting operating status of factory automation machines using reservoir computing
レザバーコンピューティングによるFA機器の稼働状況検知

 製造工場で動作する様々なFA機器の動作状況を、その振動パターンを元に検出するシステムについて発表します。

 製造工場のFA機器は種類が多いうえに、入れ替わりが頻繁なため、大量のデータを必要とする従来の機械学習によるAIを、FA機器の管理に適用することは困難です。本研究では、レザバーコンピューティングを適用することで、少ないデータで工場のFA機器の稼働状況を識別可能であることを示しました。

Hammering test system using Reservoir Computing
レザバーコンピューティングによる打音検査システム

 音の響きや時間変化を元に音源を特定する打音検査システムについて発表します。
 打音検査は、専門家が対象をハンマーなどで打つことで、音に基づいて対象を判断する行為です。聴覚的な判断には経験の積み重ねと専門知識が必要であり、スキルの習得は容易ではありません。熟練した専門家の技能をAIで代替することは人手不足の解消につながりますが、AIに必要な大量の音声データを網羅的に収集することは困難です。本研究では、レザバーコンピューティングを適用することで、低い計算コストで学習・推論が可能になることを示しました。

レザバーコンピューティングとは

 レザバーコンピューティングとは、レザバー計算モデルをコンピュータシステムに適用する技術の総称です。
 レザバー計算モデルは、自己回帰型ニューラルネットワーク Recurrent Neural Network(RNN)の一種で、時系列情報処理に適した機械学習の枠組みです。レザバーはため池という意味で、例えば小石をため池へ投げると水面に波紋が生じますが、この波紋から、どこに、どのような小石が、どのような順番で投げられたのかなどを推測することができます。このように、投げ入れた小石の時系列情報を知りたい時に、水面の波紋という全く別の形に変換して認識処理を行うのがレザバー計算モデルの概念です。
 他のディープラーニングモデルに対するレザバー計算モデルの優位性として、結果出力部分のみを学習対象とすることで、学習の計算量が大幅に削減可能となることが挙げられます。これをハードウェアに実装することで、高効率・高速な機械学習デバイスを実現可能な技術として注目されています。

関連リンク

The 5th International Symposium on Neuromorphic AI Hardware

https://www.brain.kyutech.ac.jp/~neuro/2023/11/30/5th-sympo/

関連ニュース

NEDO「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」の委託先に採択されました(2022年4月25日)

https://www.sec.co.jp/ja/ir/news/auto_20220422526036/pdfFile.pdf